『サクランボたちの幸せの丘』(徳間書店 2007)
著者:アストリッド・リンドグレーン
訳者:石井登志子
リンドグレーンの本はたくさん読んだけれども、この本は、2007年に初めて日本で翻訳されたもので、私は最近まで全く知らなかった。
双子の姉妹と両親の、初夏から9月までの農場の生活が描かれている。
本のなかの、スウェーデンの夏の風景、白夜の祭り、花々、湖、サウナ、村の青年たちとの交流、ザリガニパーティー(「やかまし村の子供たち」の映画のシーンを思い出す)等々は、とても魅力的だった。
自分が頼りになる働き手となること、よく働くことの大切さ、それと同時にしっかり休んで日々を楽しむことの大切さという、人生の基本を伝えてくれている。
語り手であるバーブロは、ユーモアが一杯で、楽しく、とてもチャーミングな本である。
そして、本の中の季節である夏に合わせて、自分も同じ時期に読むのが、ぴったりの本だった。
農場育ちのリンドグレーンの、幼い頃の体験に基づいた本だというが、子供の頃の記憶が、深く根付いていて、生まれながらの物語の語り手なのかと思う。
(ローラの父が、ローラの描写力を見込んで、お前はメアリーの目になれといったことを思いだす。)
(読了:2024/8/24)