『大きな森の小さな家(福音館書店1972)』
作者:ローラ・インガルス・ワイルダー(1867- 1957)
訳者:恩地 三保子
画:ガース・ウィリアムズ
福音館のローラのシリーズは、わくわくするような挿絵があって、とても面白く、小学生のころ何度も繰り返し読んだ。
NHKで、『大草原の小さな家』(アメリカのNBC制作)のドラマをみたのが、本を読むきっかけで、ドラマのオープニングで、テーマソングのなか、ボンネットを首にかけたローラが、大草原を走ってくる姿に、夢中になった。
サブスクといったものでなくても、テレビでよい番組が見られた時代だったと思う。
『大きな森の小さな家』は、森の中の生活に引き込まれた。豚を解体した日に、豚のしっぽをもらって焼いて食べたり、膀胱で風船を作って遊んだことや、クリスマスが、特別の行事で、プレゼントのキャンディが輝くばかりの贈り物であったことなど、忘れ難い。
生活の細部まで、センス良く、清潔で、行き届いていて、心地よい工夫がされている(花のかたどりをしたバターや紙を切り抜いて、手作りの棚をデコレーションする)。
アメリカに留学に行った当初、DC近くのIKEAで、家のドアや、トイレの便座といったものが売られていて、現地の人がそれを車のトランクの後ろに、むき出しのまま括り付けて帰って行く姿に、びっくりした。Do it yourselfの世界で、自分たちの住む家も、食べ物も肉も、衣類も、全てを自分たちで作っていた、ローラの世界の原点が生きていると思った。
子供のローラが生活した、1870年代の開拓時代から、強烈な資本主義国家、GAFAMや、二極化するアメリカへの移行が驚異と思える一方で、今のアメリカのうしろに大草原の世界が、はっきりとすけてみえるのも事実だと思う。
(読了2023.12.15)